よみうり新聞 「とちぎそば探報」より

2008年5月にオープンした「そば市」店主・
落合幸市さん(55)の、そばに対するひたむきな姿勢と、
香り高いそばの味に引かれ、二度、三度と足を運ぶ
そば好きが増えている。

落合さんは、子供のころからのそば好き。
多忙な両親には、なかなか打ってもらえず自己流で
打ち始めた。
「最初はつながらず、そばらしくなるまでには時間も
かかりましたね」と振り返る。

その後、自営業の傍らそば打ちと研究に励み、
「いつか必ずそば店を開きたいと、家族にも言い続けて
きたんです」と話す。

夢を実現し、自宅敷地内に造った店は、落合さんの
30年間の思いと構想が詰まっている。

店名の「玄味(げんみ)」の名の通り、玄ソバにこだわった。
葛生の牧地区の集団営農グループから仕入れ、
ロール挽きで自家製粉。
歯ごたえと風味を出すため、粗めと細かいメッシュの
2種類のふるいにかけてブレンドし、
二八に打つ。
つゆは「甘いのが好きじゃない」(落合さん)と、
かつお節だけで.だしをとった濃い目の辛つゆ。
かえしは20〜30日寝かせて使っている。
「30年間いろいろ試しましたが、少ない材料に
手をかけたほうが、いいものができる気がします」と話す。

水まわしなど「指先の感覚が頼り」だが、年季が入った
腕は確か。
毎日のそば打ちに「充実感があります」。